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大阪地方裁判所 昭和30年(行)78号 判決

原告 株式会社福田商店

被告 大阪国税局長

主文

被告が、昭和三〇年一〇月五日原告に対してした、原告の昭和二八年八月一三日から同年九月三〇日までの事業年度分法人税に関する同年度の所得金額を五〇、三〇〇円とする審査決定のうち、三一、八〇〇円を超える部分を取り消す。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は「被告が、原告に対し昭和三〇年八月一五日にした、原告の昭和二七年八月一三日から昭和二八年八月一二日までの事業年度分の法人税に関する同年度の所得金額を、一、〇〇八、一〇〇円とする審査決定及び昭和三〇年一〇月五日にした、原告の昭和二八年八月一三日から同年九月三〇日までの事業年度分の法人税に関する同年度の所得金額を五〇、三〇〇円とする審査決定をいずれも取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として、

「一、原告は、昭和二七年八月一二日設立にかゝる、浴場の経営、金属類その他物品の売買等を目的とする株式会社であるが、尼崎税務署長に対し、昭和二七年八月一三日から昭和二八年八月一二日までの事業年度(以下第一期事業年度と略称する。)の法人税に関する所得金額を四二、〇四〇円、法人税額を一七、六四〇円と確定申告し、昭和二八年八月一三日から同年九月三〇日までの事業年度(以下第二期事業年度と略称する。)の分は七八、四六五円の欠損を生じたので、その旨欠損報告をした。ところが、同税務署長は、昭和二九年一一月一五日付で第一期事業年度の所得金額を一、五二八、六〇〇円、法人税額を六四二、〇一〇円、第二期事業年度の所得金額を七六、一〇〇円、法人税額を三一、九六〇円と更正して原告に通知してきた。これに対しては再調査の請求をしたのであるが、同年一二月二七日付の、右請求は棄却する旨の決定の通知を受けたので、更に被告に対し審査の請求をしたところ、被告は、第一期事業年度分については昭和三〇年八月一五日、所得金額を一、〇〇八、一〇〇円、法人税額を四二三、四〇〇円とする審査決定をし、第二期事業年度分については同年一〇月五日、所得金額を五〇、三〇〇円、法人税額を二一、一二〇円とする審査決定をし、いずれも原告に通知した。

二、しかしながら、前述のとおり、原告の第一期事業年度分の所得金額は四二、〇四〇円、法人税額は二七、六四〇円、第二期事業年度分の所得はなく、欠損額七八、四六五円であるから、被告の右決定は違法であり、その取消を求めるため本訴に及んだ。」と述べ、

被告の主張に対し、

「被告の主張事実中、原告の第一期事業年度における浴場経営に関する燃料費が七三八、八四六円、水道料が一四七、四六四円、同業者平均の燃料費比率が三〇%、同じく水道料比率が七・四%であること、同事業年度の屑鉄販売に関する原告提出の損益計算書記載の売上金額が二九、六六五、〇〇〇円であること、同事業年度と同じ期間の多田商店並びに谷中商店名義の親和物産に対する屑鉄売上金額がそれぞれ一三、九六二、四六三円及び五〇〇、〇〇〇円であること(右多田商店並びに谷中商店名義の売上金額がすべて原告の売上金額であるとの点は争う。)、原告の同事業年度の本来の営業による利益でない利益が被告主張のとおり二六、三八四円、本来の営業による損失でない損失が同じく二六八、六二八円であること、第二期事業年度における屑鉄販売に関する原告の売上金額が六、〇〇〇、〇〇〇円であること、同事業年度と同じ期間の多田、谷中両商店名義の親和物産に対する屑鉄売上金額が一、〇七八、四〇〇円であること(右多田、谷中商店名義の売上金額が原告の売上金額であることは争う。)原告の同事業年度の本来の営業による利益でない利益が八六〇円、本来の営業による損失でない損失が一五八、八二九円であること、両事業年度を通じて、浴場経営に関する平均営業利益率が一八・五%、屑鉄販売に関するそれが一・九%であること、原告が青色申告法人でないこと、以上の事実はいずれも認める。

原告が多田商店及び谷中商店なる仮空名義を使用し自己の営業の一部を隠ぺいしているとの事実は否認する。多田商店、谷中商店はいずれも実在し、原告とは全然別人格である。訴外福田慶吉が尼崎市昭和通五丁目において訴外多田義信と共同で古鉄等の売買を業とする多田商店を営んでいたものであり、その後多田義信が不正を働いて逃亡したので訴外谷中某と共同経営することとなり谷中商店と名称を変更したものである。」と述べた。(立証省略)

被告は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁及び主張として次のとおり述べた。

「一、原告の主張事実中一の事実は認める。

二、原告の各事業年度分の所得金額について被告がなした計算の根基は次のとおりであつて、なんら違法の点はない。すなわち、

(一)  被告は、原告の営業について原告の取引先である訴外親和物産株式会社(以下親和物産と略称する。)、訴外尼崎信用金庫等を調査した結果、次のような事実を確認したので、原告が金属類販売の営業の一部について多田商店及び谷中商店という仮空の名義を用いて取引し、自己の営業活動の一部を隠ぺいしているものと認めた。

(イ)  親和物産においては多田義信(多田商店の営業者であると原告が主張する者)という人物を知らない。

(ロ)  親和物産が多田商店へ連絡する必要があるときは原告へ電話することとなつていた。

(ハ)  多田商店名義で親和物産へ売られた商品は各取引毎に原告の売つた商品と一致している。

(ニ)  親和物産が代金支払のために振り出した小切手の番号が殆んどの場合原告の分と多田商店の分と連絡している。

(ホ)  昭和二八年七月一八日に尼崎信用金庫の原告名義の当座預金から引き出された三五〇、〇〇〇円が同日同金庫の多田義信名義の普通預金に入金されている。

(ヘ)  同年八月一七日に右多田義信名義の普通預金に入金されている一、七九四、九七四円は、原告の代表取締役である福田武雄が同金庫から手形貸付により借り入れた一、八〇〇、〇〇〇円から割引料を控除して受領した金額である。

(ト)  谷中商店名義による取引も以上述べたことと同様の状態であつた。またその使用されている名前を調査すると谷中和夫、谷中枚夫、谷中義雄、谷中信夫、谷中信明といくつもある。

(チ)  訴外三井銀行が訴外東洋製油株式会社に対する抵当権を実行した際原告が落札購入した鉄材について原告に質問したところ、それは訴外南商店が多田商店から融資を受けて落札購入したものであるとの回答を得たが南商店を調査したところ右のような事実はない。

被告は、原告に対しこれらの事実を提示して説明を求め会計帳簿等の開示を求めたがなんら納得できる説明をしないので原告の提出した決算書類は信用できずそれのみによつて原告の所得の決定をすることはできないと認めた。そこでやむをえず法人税法第三一条の四第二項により推計々算の方法によることとした。なお原告は第一期事業年度から青色申告法人となつていたが、尼崎税務署長は昭和二九年七月三一日第一期事業年度にさかのぼつて青色申告書を提出することのできる承認を取り消し、その旨を原告に通知したから、審査決定当時青色申告法人ではない。

(二)  被告のなした推計々算の詳細は次のとおりである。(尼崎税務署長の計算書では屑鉄販売による営業利益率が三・一%となつていた。これを一・九%と修正したほかは同税務署長のした計算と同じである。)

第一期事業年度

(イ)  浴場経営による収益

浴場経営は業況普通の場合収入金額に対する燃料費水道料の割合がほぼ一定していることが浴場経営調査の結果明らかとなつている。

A、燃料費を基礎とした場合

燃料費     七三八、八四六円(原告提出の損益計算書による)

燃料費比率        三〇%(同業者平均比率)

収入金額  二、四六二、八二〇円(738846÷0.3=2462820)

B、水道料を基礎とした場合

水道料     一四七、四六四円(原告提出の損益計算書による)

水道料比率       七・四%(同業者平均比率)

収入金額  一、九九二、七五六円(147464÷0.074=1992756)

A、Bにより算出した収入金額の算術平均により収入金額は二、二二七、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満切捨)と認定される。

同業者間平均営業利益率 一八・五%

営業利益 四一一、九九五円(2227000×0.185=411995)

(ロ)  屑鉄販売による収益

A、尼崎信用金庫の多田義信名義の口座に入金したもののうち多田商店名義をもつて親和物産等に販売した代金と認められるもの 一三、九六二、四六三円

B、谷中商店名義をもつて親和物産に販売した代金を記帳していなかつたもの 五〇〇、〇〇〇円

C、原告提出の損益計算書記載の売上金額 二九、六六五、〇〇〇円

売上総額(A+B+C) 四四、一二七、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満切捨)

営業利益率              一・九%

営業利益           八三八、四一三円(44127000×0.019=838413)

以上の浴場経営及び屑鉄販売による営業利益の合計額に本来の営業による利益でない受取利息・雑収入別口預金の利息合計二六、三八四円を加え、本来の営業による損失でない支払利息及び割引料二六八、六二八円を減じて所得金額を一、〇〇八、一六四円と計算した。

第二期事業年度

当期は営業期間が短かく、かつ原告会社の業績は前期と変化はないと認められたので前期について被告が計算した収入金額を基礎とし右金額に一二分の二を乗じて算出した。当期の期間は四九日であるのに前期収入金額の一二分の二をもつて計算したのは、前期屑鉄の推定販売高四四、一二七、〇〇〇円に三六五分の四九を乗ずると五、九二三、九〇〇円となり、原告計算の売上額六、〇〇〇、〇〇〇円に谷中、多田商店名義の売上額一、〇七八、四〇〇円を加算した額した額より少額となつて不都合となるので端数の一ケ月を満一ケ月としたものである。

(イ)  浴場経営による収益

前期認定収入金額 二、二二七、〇〇〇円

当期認定収入金額   三七一、〇〇〇円(2227000×2/12=371167一、〇〇〇円未満切捨)

営業利益率         一八・五%

営業利益        六八、六三五円(7371000×0.185=68635)

(ロ)  屑鉄販売による収益

前記認定収入金額 四四、一二七、〇〇〇円

当期認定収入金額  七、三五四、〇〇〇円(44127000×2/12=7354500一、〇〇〇円未満切捨)

営業利益率           一・九%

営業利益       一三九、七二六円(7354000×0.019=139726)

以上の浴場経営及び屑鉄販売による営業利益の合計額に本来の営業による利益でない受取利息八六〇円を加え、本来の営業による損失でない支払利息、割引料等合計一五八、八二九円を減じて所得金額を五〇、三九二円と計算した。」

(立証省略)

理由

原告主張の一の事実は当事者間に争いがない。そこでまず、原告が、多田商店、谷中商店なる仮空名義を使用して親和物産に屑鉄を販売したかどうかの点について判断する。

(一)、証人宮崎諦玉、同松本義信の各証言によれば、親和物産では多田義信という人を知らず、また親和物産から多田商店に連絡する必要がある場合は原告に電話することになつていたことが認められる。

(二)、前掲各証人の証言及び成立に争いのない乙第一号証の一ないし六によれば、原告と多田商店または原告と谷中商店は、親和物産に対する商品の納入が、毎日とか或いは隔日とかのように非常にひんぱんに行われているわけではないのに同じ日にしかも同種の商品を納入している場合が多いことが認められる。

(三)、前掲各証人、証人駒村敏正の各証言並びに原告代表者本人尋問の結果及び成立に争いのない乙第一号証の七ないし一三によれば、原告は親和物産に対する多田商店または谷中商店名義の売掛代金を集金する場合は、原告の方ですると申し入れ、原告の会計等の事務を担当している訴外駒村敏正が多田商店または谷中商店名義の分も一しよに親和物産から受け取つていたこと、従つて親和物産が代金支払として振り出した小切手が原告宛のものと多田商店宛のもの、或いは原告宛のものと谷中商店宛のものとで、それぞれ連続番号になつている場合が多いことを認めることができる。

(四)、成立に争いのない乙第二号証及び証人宮崎諦玉の証言並びに弁論の全趣旨により真正に成立したものと認める乙第三号証によれば、原告代表者である訴外福田武雄が昭和二八年八月一七日息子の訴外福田貞夫名義の定期預金等を担保にして、手形貸付の方法により、尼崎信用金庫から一、八〇〇、〇〇〇円を借りたこと、同日同金庫の多田義信名義の普通預金に一、七九四、九七四円が預け入れられていること、右多田義信の約一年間の預金帳で一、〇〇〇、〇〇〇円を超える金額を預け入れたことは右の一、七九四、九七四円のほかに一、五一〇、〇〇〇円たゞ一回しかなく、右の一、七九四、九七四円は福田武雄の借り入れた一、八〇〇、〇〇〇円から割引利息を差し引いた金額であると認めることができる。

(五)、証人平野計太郎、同片山隆司、同駒村敏正の各証言、前掲乙第二号証及び成立に争いのない甲第七号証を綜合すれば、昭和二八年一月二六日に尼崎信用金庫の原告名義の当座預金から四八〇、〇〇〇円、多田義信名義の普通預金から五二〇、〇〇〇円がそれぞれ引き出され、両者を合わせて金一、〇〇〇、〇〇〇円の支払保証小切手一通が南商店宛に振り出されていることが認められる。

(六)、前掲乙第一号証の四、六、第二号証によれば、帳簿面上の多田商店と谷中商店の存在時期が非常に接近し、或いは谷中商店が親和物産と取引をはじめてからもなお半月ほどの間多田義信名義の普通預金が出し入れされていることが認めることができる(このことは、多田が不正を働いて逃走したので福田慶吉が谷中と一しよになつて事業をはじめたという原告の主張と、これに副う証人駒村敏正の証言及び原告本人尋問の結果を納得させない)。

(七)、前掲甲第七号証及び成立に争いのない甲第四、六号証によれば、原告は、昭和二八年七月一八日に尼崎信用金庫の原告名義の預金から小切手で三五〇、〇〇〇円を引き出し、金銭出納簿(甲第六号証)には、同日「鉄屑買入」として三五一、〇七六円の支出が記載されている。ところが、右金銭出納簿のこの部分の仕入に関してのみ仕入先の氏名が記載してなく、仕入帳甲(第四号証)にも、これに対応する仕入の記載がない。一方前掲乙第二号証によれば、同月二〇日尼崎信用金庫の多田義信名義の普通預金口座に三五〇、〇〇〇円入金されていることが認められる。以上の事実と証人宮崎諦玉の証言とを総合すれば、同月一八日に右原告名義の預金から引き出された三五〇、〇〇〇円と同月二〇日に多田名義の預金に預け入れられた三五〇、〇〇〇円とは同一のものであると考えることができる。

(八)、証人武田賢一の証言によれば、同人が多田商店と鉄材の取引をした際、多田商店の所在地や電話番号は知らず、一切の交渉を原告会社において行つたことが認められる。

(九)、証人松本義信の証言によれば、同人は、谷中商店の所在を調査するため、小切手の裏書にある谷中商店の場所へ実際に行つて調べるなどしたが、わからなかつたことが認められる。

原告代表者本人尋問の結果中右(五)の認定に反する部分は、同項掲記の証拠に照らして措信できず、他に右各認定を左右するに足る証拠はない。

以上認定した各事実並びに証人片山隆司の証言及び弁論の全趣旨を総合すれば、多田商店及び谷中商店は、営業の一部隠ぺいのための原告の別名であつて、親和物産の帳簿上あらわれている多田商店あるいは谷中商店と親和物産との取引はすべて原告と親和物産との取引であると認めるのが相当である。原告代表者本人尋問の結果及び証人駒村敏正の証言中右認定に反する部分は措信せず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。

そうすると、尼崎税務署及び被告の調査に当つて原告が提出した、原告名義の金銭出納簿その他の計算書類は、真実の営業内容が記載されていないものといわなければならない。従つて、原告が青色申告法人でないことは当事者間に争いがないから、被告が、推計によつて原告の所得を算出したのは妥当である。その推計が正しいかどうかを、以下順次判断する。

(一)  第一期事業年度における所得。

(イ)  浴場経営による利益。

同事業年度中原告が支出した燃料費が七三八、八四六円、水道料が一四七、四六四円であること、同業者平均の燃料費比率が三〇%、水道料比率が七・四%、浴場経営による営業利益率が一八・五%であることは、いずれも当事者間に争いがない。従つて、燃料費を基礎として算出した収入金額と、水道料を基礎として算出した収入金額の算術平均を、原告の浴場経営による収入金額と推定し、これに右営業利益率をかけて、原告の浴場経営による利益を四一一、九九五円とした被告の推計方法は正当である。

(ロ)  屑鉄販売による利益。

同事業年度中の原告名義の売上金額が二九、六六五、〇〇〇円、多田商店名義の売上金額が一三、九六二、四六三円、谷中商店名義の売上金額が五〇〇、〇〇〇円であること、営業利益率が一・九%であることは、いずれも当事者間に争いがない。従つて、原告の屑鉄販売による利益は、被告主張のとおり、右売上金額の合計額に営業利益率をかけて算出した八三八、四一三円となる。

同事業年度中の原告の本来の営業による利益でない利益が二六、三八四円、本来の営業による損失でない損失が二六八、六二八円であることは当事者間に争いがない。従つて、原告の総所得金額は一、〇〇八、一〇〇円(国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律第五条により一〇〇円未満切捨)となる。

(411995+838413+26384-268628=1008164)

従つて第一期事業年度の原告の所得金額に関する被告の審査決定には違法の点はないというべきである。

(二)  第二期事業年度における所得。

(イ)  浴場経営による利益。

同事業年度が短期間であること及び第一期事業地度と業況に変化がないこと(このことは原告において明らかに争わない。)から、第一期事業年度における収入金額に対する期間的割合をもつて、第二期事業年度の収入金額を算出する方法は妥当であるが、その期間は四九日であるのに、これを単に被告主張のような理由でもつて、大ざつぱに二ケ月として計算するのは合理的でない。やはり四九日として計算すべきである。この点で被告の推計の方法は誤りである。従つて、原告の同事業年度中の浴場経営による利益は、前記の第一期事業年度における浴場経営による収入金額の三六五分の四九に、営業利益率一八・五%を乗じ、五五・三〇八円と認むべきである。

(2227000×49/365×0.185=55308)

(ロ)  屑鉄販売による利益。

同事業年度中の原告名義の売上金額が六、〇〇〇、〇〇〇円、多田、谷中両商店名義の売上金額が一、〇七八、四〇〇円であることは当事者間に争いがない。ところで、屑鉄の場合にも、同事業年度の期間を二ケ月として計算することが理由がないことは前記と同様である。たゞ、屑鉄の場合には、浴場の場合と同様に四九日として計算すると、右の原告及び多田、谷中両商店名義の売上高の合計額より少額となるから、この場合には右の合計額すなわち七、〇七八、四〇〇円をもつて、原告の同事業年度中の屑鉄販売による収入金額とすべきである。従つて、原告の利益は、右の七、〇七八、四〇〇円に営業利益率一・九%を乗じ一三四、四八九円となる。

同事業年度中の原告の本来の営業による利益でない利益が八六〇円、本来の営業による損失でない損失が一五八、八二九円であることは、当事者間に争いがない。従つて、原告の総所得金額は三一、八〇〇円(一〇〇円未満切捨)となる。

(55308+134489+860-158829=31828)

被告のした原告の第二期事業年度の所得金額を五〇、三〇〇円とする審査決定のうち右三一、八〇〇円をこえる部分は違法であるから取り消さなければならない。

よつて、原告の本訴請求のうち、第二期事業年度に関する所得金額の審査決定の右三一、八〇〇円を超える部分の取消を求めるのは理由があるからこれを認容し、その余の原告の本訴請求はすべて失当であるから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 平峯隆 松田延雄 高橋欣一)

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